今さら総括する理由
間もなく2022シーズン開幕……と、言いたいところだが、新しいシーズンを迎えるにあたって、昨年一つやり残したことがある。
昨年2021シーズン日本シリーズの総括である。
昨年日本シリーズ2021の一戦一戦のレポートをブログで作成し、第4戦まで行った。しかし、第5戦及び第6戦の作成、及び総括を行わなかった。
動画作成等や個人的な事情で余裕がなかったこともあり、作成のタイミングを逃してしまった。
ただ、今後はある程度定期的にブログ記事を更新していきたいと考えている。その再出発の意味も込めて、昨年の日本シリーズの総括を行っていきたい。
過去の日本シリーズ観戦記はコチラ↓
山本由伸攻略もマクガフがぶち壊す 日本シリーズ観戦記2021 オリックス×ヤクルト第一戦
ヤクルト清水粘投と気になるオリックスの継投 日本シリーズ観戦記2021 オリックス×ヤクルト第二戦
戦前の予想
個人的には絶対的エース山本のいるオリックス優勢と見ていた。他にも宮城、田嶋など先発陣の揃っているオリックスが優勢だと思っていた。短期決戦では投手陣の力がモノを言うため、先発の揃っていないヤクルトでは厳しいと見立てていた。Twitterや掲示板でのファンの予想でも、同様の理由でオリックス有利という見立てが多かった。
2021日本シリーズ結果
第1戦 オリックス4-3ヤクルト
第2戦 オリックス0-2ヤクルト
第3戦 ヤクルト5-4オリックス
第4戦 ヤクルト2-1オリックス
第5戦 ヤクルト6-5オリックス
第6戦 オリックス2-1ヤクルト
4勝2敗でヤクルト日本一
私や大方の予想を覆しヤクルトが日本一となった。
ここからは私の考えるヤクルト側の勝因、オリックス側の敗因について、それぞれみていこう。
オリックス側の敗因
下位打線・助っ人外国人の貧打
ヤクルト、オリックス共に3番打者の吉田と山田がシリーズ不振であり、共に打点を上げたものの、シリーズ1割台と不振だった。この3番打者のブレーキにより、両チーム共にあと一打が出ずに得点が上げられない展開が目立った。
そのヤクルトとオリックスの得点力の差を分けたのが下位打線と助っ人外国人の力だった。
ヤクルトは6番打者の中村がポイントゲッターとなり、チャンスでしばしば好打を見せ、7安打と3打点でMVPに選ばれる活躍となった。また、5番サンタナは第3戦・第4戦で試合を動かすHRを打つ活躍。8番オスナもチームトップタイとなる7安打を記録した。
ヤクルトが5番以下の下位打線でも活発な打撃を見せる一方、オリックスの下位打線はほぼ機能していなかった。
第1戦、第2線では5番ラベロに据えるもノーヒット。モヤも代打では結果を残したが、スタメン起用された試合では存在感を見せられなかった。内野の要であった安達もシリーズ1割代を切る打撃で足を引っ張った。紅林、太田といった若手は健闘したものの、外国人や安達ら5・6番打者の不振により、下位打線は分断されてしまった。
このように下位打線の差により、ヤクルトとオリックスの得点力に差が生まれたわけだが、個人的にはT-岡田を起用を序盤にスタメン起用していなかったのが気になった。T-岡田がスタメン起用されるようになったのは第4戦以降、それまではベンチからのスタートだった。T-岡田はシーズンでは5番打者としてほぼ固定され、要所で好打を見せることが多かった。それだけに、1-3戦でスタメン起用されなかったのが不可解だった。もしかしたら怪我か不調を考慮してのスタメン落ちだったのかもしれない。しかし、クライマックスシリーズでもヒット・打点を上げており、日本シリーズでも第5戦ではタイムリーを放った。それだけに、第1戦から5番でスタメン起用しなかったことが悔やまれる。
早めに降板させられた先発陣
私や大方がオリックス優勢としていた理由は、先発陣の駒がヤクルトより揃っているという理由だった。しかし、オリックスはその優位性を活かしきれなかった。理由はヤクルト打線の粘りにある。第一戦のエース山本はヤクルト打線を6回まで1失点と抑え込んだが、毎回のようにピンチを迎えたため、球数が嵩み、6回までしか投げることができなかった。結果的にこの第1戦はオリックスが勝利を収めたものの、エース山本に勝ち星がつかなかったことにより、思ったよりチームは波に乗れなかった。その後も第2戦に宮城が7回、第6戦は山本が9回投げ切ったものの、彼ら以外の田嶋、山崎福、山崎颯ら先発陣は5回を投げ切ることが出来ず、リリーフ陣に負担がかかった。その結果、不安定なバルガスを起用したり、吉田を頻繁に登板させなくてはならなくなった。(吉田はチーム最多5試合に登板)
オリックスはレギュラーシーズン、山本や宮城の試合で勝利し、チームが乗っていくことが多かった。しかし、日本シリーズでは彼らの登板試合で勝つことができなかったため、いまいち調子に乗っていけなかった印象だ。
ヤクルト側の勝因
ヤクルト打線の粘り
ヤクルト側の下位打線が機能し、オリックス下位打線との差が勝負を分けたことは前に書いた。山田、村上といった主軸はどちらかといえば不調だったため、オリックス側を打撃面で圧倒するという展開にはならなかったものの、チーム全体での打撃陣の一体感が伺えた。エース山本・宮城といった好投手相手にチャンスでは中々一本でなかったが、四球や短打でチャンスを作り、リズムに乗らせず、球数を多く投げさせた。こうした粘りはチーム結果としても現れた。オリックス側の方がチーム打率.240とヤクルトのチーム打率.213を上回ったものの、ヤクルト側はオリックス側を上回る23四死球を獲得した。(オリックス側は17四死球)こうしたチーム一丸となった打撃陣の取り組みが、勝負の明暗を分けたと考える。
健闘した先発陣
懸念されていたヤクルトの先発陣だが、予想よりも健闘した投手が目立った。特に目立った活躍を見せたのは第一戦の奥川と第二戦の高橋、両投手ともに日本シリーズ初登板ながら、好投を見せ、ランナーを出しながらも要所を抑え、オリックスにリードを許さなかった。この好投により、山本、宮城のオリックス二枚看板に勝ち星を付けさせなかった。両投手の好投だけでなく、正捕手中村の好リード、高津監督の若手二人を大抜擢したことも大きい。この他、小川、石川、原、高梨らの先発陣も大崩れせずリリーフに繋ぎ、オリックス側に主導権を握らせなかった。
高津監督、信念のマクガフストッパー固定
第1戦、奥川の好投と8回の村上の2ランで試合をモノに仕掛けたヤクルトだったが、マクガフが乱調。宗の2点タイムリーで同点、さらに吉田にサヨナラタイムリーを浴び、一死も取れずに勝ち試合を落としてしまう。この乱調により、ヤクルト側は守護神起用を続けるべきか悩むことになる。第2戦は高橋が完投したことにより出番なし。しかし第三戦では一点差という判断が難しい展開で9回表を迎える。ここで高津監督は迷わずマクガフをマウンドへ送った。マクガフは先頭の若月にヒットを許し、2死1,3塁のピンチを迎えるが、杉本をファーストゴロに抑え、見事抑えとしての仕事をやり切った。
この活躍により自信を取り戻したマクガフは続く第4戦も一点差の9回を投げ切りセーブを上げ、第五戦では代打ジョーンズに決勝HRを浴びるも、最終第6戦では10回裏途中から11回裏、勝ち越し後の12回裏を無失点に抑え、勝利投手となった。
マクガフの第1戦の乱調により、高津監督は守護神を交代させるかの難しい判断を迫られた。第3戦ではマクガフの代わりに清水を守護神起用するという判断もあり得た。しかし、高津監督はシーズン通り、マクガフを信頼して送り出した。マクガフが期待に応えられなければかなり不利になる展開であったが、何とかマクガフは信頼を取り戻した。
このように、守護神や主軸打者といったチームの軸となる選手は、不調でもシーズン通りの起用を行うべきだと感じている。勿論大胆な起用はハマれば大きいが、実績のある選手の活躍に期待するほうが奇策を用いるよりは効果的であると感じるからである。
しかし、もし第3戦でマクガフが打たれていたら、シリーズの行方は不透明になっていただろう。そういう意味ではやや博打的な采配であり、高津監督はその博打に勝った、という見方もできる。
シリーズ総括
両チームの投手陣の奮闘と、ヤクルト打線の底力を感じたシリーズだった。しかし、最終的には野手の選手層の厚みの差が勝敗を分けた。
ヤクルトは上位から下位まで切れ目のない打線がオリックス投手陣に圧力をかけた。オリックスは外国人や安達の不振もあり、5番以下の下位打線があまり機能せず、得点の際は上位打線の活躍によるところが多かった。繰り返すがT-岡田の5番固定起用が行われなかったことが悔やまれる。オリックスはジョーンズ・モヤは代打として一定の成績を残したが、下位打線や代打で起用する野手陣の層の薄さがネックとなった。来年度以降の日本一へ向け、オリックスは日本人野手の育成・外国人打者の発掘が課題となるだろう。
今年の日本シリーズは、昨年まで短期決戦の試合功者だったソフトバンクが進出せず、ヤクルト、オリックス双方とも久しぶりの日本シリーズとなったことで、かなり均衡した試合が行われた。1点差の接戦やシーソーゲームが多く、観戦して面白い日本シリーズとなった。双方のチームにそこまで戦力差のないことで実現したシリーズである。
久しぶりにセリーグのチームが日本一となったシリーズであるが、双方とも選手層がそこまで厚いわけではないため、両チームが連続優勝するかどうかは不透明である。2021年の交流戦ではセリーグが勝ち越すなど、それまでパ・リーグ優勢だった両リーグの情勢がどう変化していくのか、注目していきたい。
それでは皆さん、良き野球ライフを!